前回のコラム「日本の性教育の現状」でも少し触れた『包括的性教育』
すでに耳にしたことがある人もいるかもしれません。
ここでは改めて、包括的性教育とはどいうものなのか?
詳しく掘り下げていきたいと思います。
1.包括的性教育の中身
2.包括的性教育を行うことによる効果
3.“知る”ことで初めて、自分を正しく守れる
1.包括的性教育の中身
国際連合教育科学文化機関ユネスコから出ている「国際セクシュアリティガイダンス(以下、「ガイダンス」)」では、包括的性教育のことを「セクシュアリティの認知的、感情的、身体的、社会的側面についての、カリキュラムをベースにした教育と学習のプロセス」と定義しています。
身体的な発育や第二次性徴、生殖に関することなど、日本の性教育でよくイメージされるものを含め、それ以外にも社会的な規範や、人の価値観の違い、差別や暴力、ジェンダー平等など、幅広く教育内容を網羅しているのが「包括的性教育」とされています。
その内容は以下の8つのキーコンセプトに分かれています。
先に述べたように、よくイメージする「性教育」といえば、6,7,8番あたりではないでしょうか。
それ以外の項目も内容として幅広く包括的に扱うものが、包括的性教育なのです。
また、包括的性教育には内容以外の特徴も持っています。
包括的性教育の重要項目として、
・科学的に正確であること
・徐々に進展すること
・年齢、成長に即していること
・カリキュラムベースであること
・包括的であること
・健康的な選択のためのライフスキルを発達させること
などがあります。
(引用:「ガイダンス」P.28~31より抜粋)
つまり、単発で部分的な内容を取り扱うのではなく、カリキュラムとして繰り返し段階を追って学んでいくものということです。
現に、ガイダンスでは年齢を4つのグループ(5~8歳、9~12歳、12~15歳、15~18歳以上)に分け、それぞれの年齢に応じた内容・学習目標が細かく書かれています。
そして、内容が科学的な事実に基づき正確であることも大切で、命に関する感動的な話をすることや道徳的な話をすることは性教育ではありません。
2.包括的性教育を行うことによる効果
性教育に否定的な意見で、「寝た子を起こすな」というものがあります。
つまり、生殖(主にSEX)についてまだ知らないのに、教えたらそこでどんどん興味を持って突き進んでしまうんじゃないか、というものです。果たして本当にそうなのでしょうか。
この包括的性教育を行うことによってどんな効果・結果がもたらされるかという研究は多くされています。
それを見ると
・初交年齢が遅くなる
・性交渉の頻度が減る
・性的パートナーの数が減る
・リスクの高い行為が減る
・コンドームの使用が増える
・避妊具の使用が増える
という研究結果がすでに出ています。
正しく知識を得ることは、性活動が乱れることには繋がりません。
むしろ、SEXによって起こり得る妊娠や性感染症のリスク、またその回避方法を正しく知ることで、慎重で正確な対処を持って行動できます。
3.“知る”ことで初めて、自分を正しく守れる
誰だって病気にはかかりたくないですし、子ども自身「今妊娠したら困る」という考えに至ることも当然でしょう。
知識を与えることに関して、もう少し、子どものことを信用してもいいんじゃないでしょうか。
むしろ正しく段階的に学ぶことはほとんどないのに、インターネットでは自由に過激な性情報・興味を煽る描写が飛び込んでくる、今の日本の現状の方が、よっぽど子どもに無防備な行動を取らせる原因となっていると思います。
「寝ていたとしても叩き起こされる」のが、今すでにある現状です。
性に関する知識は、今の大人でも不確実であることが多いです。
それは、大人もちゃんと学んできてないからでしょう。
その不確かな知識で、今まで特段トラブルが無かったのは、単にたまたま運が良かっただけです。
まずは知らないことには、行動できません。
自分を守ることも、相手を守ることもできません。
知らないことで悲しい思いをすることが、一人でも減って欲しいと思っています。