最近では、親側の意識の高まりもあり、「親向け」の性教育講演が増えています。
私の著書「みがまえなくても大丈夫!性教育は、こわくない」でも、親向けに子どもへの性教育について執筆しました。
私自身も親向けに性教育の講演をすることは多いですが、その時に私が大切にしていること、「親が性教育をする」というテーマを通して何を大事にして欲しいか、ここで改めてお伝えしたいと思います。
・「わざわざ教えなくても大丈夫」?
・昔と今、子ども達が置かれている環境の違い
・親が性教育を意識することの意味
「わざわざ教えなくても大丈夫」?
今現在の大人も、これまで性教育をしっかり受けてきた人は居ません。
そのため、性教育について「そんなわざわざ教えなくても、自然に覚えるでしょ」という考え方の人も少なくありません。
もしくは、片方の親は性教育をしたくても、もう片方の親がこのようにしてそれを止めたり、はたまた祖父母世代から性教育に取り組むこと、考えることを阻止されることもあるかもしれません。
親向け性教育講演でも、そういったお悩みがしばしば聞かれます。
性に関する知識に関して厄介なのが、知らなかったからといって失敗やトラブルに必ず遭遇するわけではないということ。
また、知っていたとしても失敗やトラブルに遭うこともある、という側面もあります。
つまり、知識量が失敗やトラブルに比例するわけではない、ということです。
妊娠一つとっても、確実な避妊をしなかったからといって、100%妊娠するわけではありません。
これが、確実に避妊しないと100%妊娠する、のであればみんな一生懸命性の知識を勉強するし、必修の項目になるでしょう。
前のコラムで書いたようにいくら日本の性教育が不十分でも、そんな中で性に関連して本当に困った経験のある人や傷ついたことのある人は一握りかもしれません。
ですので、「しっかり教わることはなかったけど、特にトラブルなくここまで来た」という人が一定数居るということです。
そのため、性教育に関して重要視する度合いは、その人それぞれの経験によって左右されることになります。
昔と今、子ども達が置かれている環境の違い
それでも近年、学校側よりもむしろ親の方が性教育への関心が高まっていると感じます。
昔と今、子ども達が置かれている環境の違いは、なんといってもインターネット環境の充実にあると思います。
今の大人が子どもだった時代より、子ども達にとってインターネット端末は格段に身近なものとなっていることは、私自身も親の身として実感するところでもあります。
子どもが2~3才でも少しの時間やお手本を見せれば、端末をそれなりに操作することもできます。
そして、犯罪から子どもを守るために何かしらの端末を子どもが小さい頃から持たせる、ということも当然あると思います。
インターネット上にはさまざまな情報が溢れかえっていて、昔よりも子どもに対して入ってくる情報量が格段に違いますし、インターネット上の交流も盛んに行われることが、今や普通です。
また、ちょうど今の親世代も中高生の頃から当たり前に携帯電話やインターネットに触れてきた世代でもあります。
そのため、親自身が情報端末を子どもに使わせることに関して特に違和感がない、ということも言えますし、インターネットに触れるということを実感として十分知っているからこそ、子どもへしっかり正しい知識を教えておきたいという意識になっている親も多いを思います。
親が性教育を意識する意味
親向け性教育講演で、「「子どもからこんな質問があったらどう答えるか」「こんな時はどう対応するか」など、性教育として”どうすればいいか”というHow toはよく話していますし、質問も多いです。
大人も性教育を受けてないわけですから、”どう対応するか”というイメージが難しいですし、「どうすべきか」を知らないと行動もできません。
「何をどう話すか」「どう対応するか」は行動を実践できるレベルで知っておくだけで、性教育と向き合おうと考えてくれる親にとってとても助かる知識になるでしょう。
実践レベルで対応を知ることももちろん大事ですが、私はその根底に持っておくべき「性をタブー視しない」という大切さを分かっておいて欲しいと思っています。
性教育に向き合う、ということは「性をタブー視しない」ということです。
子どもからの性に関する質問に対して、ごまかさずに受け答えをする。
子どもとの会話で性に関する話題を扱う。
この態度を見せることが、子どもにとって重要となります。
子どもが小さい頃から性教育に取り組んでいたとしても、いずれ思春期が訪れ、距離ができてしまって親子であまり話さなくなるということもあるかもしれません。
小さい頃から性教育をしたからといって、トラブルに遭わないということではなくですし、反抗期にならないというわけでもありません。
子ども自身が、実際に性のトラブルや悩みを抱えやすいのははやり思春期が多いです。
未成年の子どもは、やはり社会的に弱い立場にありますし、親の権限がとても強い。
何かトラブルを抱え1人で解決したくても、それが社会的にも経済的にもできないこともあります。
そんな時、それまで性をタブー視してきた親だったらどうでしょうか。
とても親には言えない、と子どもはトラブルを1人で抱えてしまい、時にはより間違った方向へ進んでしまうかもしれません。
親が性をタブー視しないという姿勢は、子どもに何かあった時に最終的には相談することができる、ということに繋がると思います。
性教育の重要性を私もよく話しますが、なにも「性にオープンな親子」にならなくてもいいのです。
距離ができてしまうことや、何を考えてるのかよく分からない、ということもあるかもしれません。
ですが子どもが本当に困った時、相談に乗ってあげられる親であって欲しい、子どもが「言いにくいけど相談しなきゃ」と思うことのできる親であって欲しい、と私は願います。
それが、子どもを救うことに繋がるからです。
性教育を通じて、「子どもと向き合うこと」の大切さを私は伝えていきたいです。